ネットショップにおけるUXの視点と重要性
こんにちは。
水上 浩一です。
今回は「ネットショップにおけるUXの視点と重要性」について説明させていただきます。UXとは「ユーザー・エクスペリエンス」の略で、直訳するとユーザー体験ということになります。売れるネットショップにするためにはUXをどのように設計していくのがよいか。視点と重要性の観点から検討したいと思います。
■UXの視点と重要性を購入転換率(CVR)で比較
実店舗とネットショップ、どちらの購入転換率(CVR)が高いでしょうか?
購入転換率(CVR)は、来店ユーザーのうち購入に至った割合のことです。
たとえば100人が来店して、1人が購入したら購入転換率(CVR)は1%になります。
実店舗では10人が来店したら1人や2人は購入すると思います。
この場合、購入転換率(CVR)は10~20%となります。
一方、ネットショップではどうでしょうか?
モール店か独自ドメイン店かの違いはありますが、独自ドメインのネットショップの場合、100人が来訪して1~2人が購入する、程度ではないでしょうか?
この場合は、購入転換率(CVR)1~2%となります。
購入転換率(CVR)を比較すると実店舗とネットショップでは10倍の差があると言えるでしょう。
この差はどこから来るのでしょうか?
それをUXの観点から考えてみたいと思います。
実店舗とネットショップの購入体験の違いでまず考えられるのは「商品を実際に体感できるかどうか」があげられます。
実店舗であれば実際に手に取ってみたり、サンプルがあれば試用もできます。衣服や靴の場合は試着ができますし、食品であれば試食もできます。
つまり商品を実際に体感できるわけです。
一方、ネットショップでは、Webページに掲載されている商品に触れることができません。もちろん試着も試食もできません。
Webページに掲載されているテキスト情報や画像、動画を通じて「推測」して購入することになります。これが購入転換率(CVR)の低下の原因の一つと言えるでしょう。
この解決方法としては、
- 生地サンプル等、素材サンプルの貸し出しサービスによって質感を確認できるようにします。
- サイズのある、たとえば靴の場合、複数のサイズの靴を販売して自宅で試着後、フィットしたものだけを残し、残りを返品する「おうちで試着」というサービスを提供しているネットショップがあります。もちろん返送料は店舗負担です。このサービスにより購入転換率(CVR)は通常のネットショップよりもかなり高くなります。
- 食品の場合は、複数の商品を少しずつ試食できる「お試しセット」を衝動買いできる価格帯で販売する、などが考えられます。衝動買いできる価格帯としては、1,980円、2,480円、2,980円、3,980円といったプライシングが有効です。もちろん送料込みで提供すると購入転換率(CVR)は高くなります。
以上のようなことが考えられます。
■「カスタマイズされた接客」の有無が購入転換率(CVR)を左右する!
購入転換率(CVR)が実店舗とネットショップで10倍の差があるもう一つの理由に「接客」があげられます。もう少し詳しく説明すると「カスタマイズされた接客」の有無と言えると思います。
たとえばレディスアパレルのセレクトショップの場合を考えましょう。
実店舗に一人のユーザーが来店します。
しばらく服を見ていますが、そのうちどうも首をかしげながら動きが止まってしまいました。どうやら悩んでいるようです。
店員さんが声をかけます。「なにかお困りですか?」
するとユーザーは「実は来週、上司と食事会があって、そのときに着る服を探しています。でも、何を着たらよいかわからなくて……」
と返事が返ってきました。
そこで店員さんは、そのユーザーの容姿を一通りチェックしたあとで、いくつかのアイテムをピックアップして提示します。
「お客様でしたらこのコーディネートがお似合いだと思います」
自分の好みとフィットした場合には「よく私の好みをわかってくれましたね」と喜んでそのコーディネートを受け入れると思います。
自分では決して選ばないコーディネートの場合は、「この組み合わせ、試したことがありません」という反応になると思います。そこで店員さんは「ではぜひ試着してみてください。きっとお似合いですよ」と。
そこで好奇心もあり試着します。
すると「あ、いままで試したことが無かったけど、こういうコーディネートもよいですね」と新しい自分の魅力に気が付く機会にもなります。
その結果、満足して購入していきます。
セレクトショップであれば、それら一つひとつのアイテムは他店でも取り扱っています。
しかし、その場で提示されたコーディネートはそのユーザーに対して「カスタマイズ」されたそのユーザーだけに対する提案なのです。
このカスタマイズされた提案を接客できるところが実店舗の強みであり、購入転換率(CVR)の差になっていると推測されます。
■カスタマイズされた接客をネットショップで行うためには?
ネットショップでは基本的に、この「カスタマイズされた接客」はできません。
せいぜい電話かメールでの対応ができる程度です。
ところが、ネットショップでも「カスタマイズされた接客」に近いサービスを提供することができる場合があります。
このカスタマイズされた接客には2つの要素があります。
- ユーザーの購買動機
- ユーザーに合わせたレコメンデーション
まず、「ユーザーの購買動機」ですが、前出の事例では「上司との食事会で着ていく服を探している」です。
たとえばこのユーザーがネットショップを見て「上司との食事会コーディネート」というバナーを発見したら?
「そうそう、上司と食事会があって、何を着ていったらいいか困っていたんです!」とそのバナーをクリックすることと思われます。
そしてそのバナーのリンク先には、きちんと説明されたコーディネート集が掲載されています。
当然、購買確率は高くなるはずです。
つまり店舗側で想定できる購買動機をできるだけ細分化、具体化してそれをバナーにして掲載するのです。この方法は特にスマホで効果的です。おそらく物理的にスマホとユーザーとの距離が近いから直感的にタップするから、というのが理由だと思いますが、このバナーを掲載したネットショップは軒並み購入転換率(CVR)がこれまでの数倍アップしています。なかにはPCの購入転換率(CVR)を上回った事例もあります。
もう一つ、「ユーザーに合わせたレコメンデーション」ですが、これが実はネットショップの真骨頂だと言えます。
これまでのユーザーの購買履歴データから、そのユーザーの好みを分析できるので、的確に好みに合わせたレコメンデーションを行えます。
また、ネットショップ内におけるすべてのユーザーの購買履歴データをもとに表示させるレコメンデーション機能を活用すれば、この商品に興味を持った方はこんな商品もおすすめ!というビッグデータを活用した商品提案を行えます。
ネットの書店で目当ての本を買おうと思ったら、レコメンドされているタイトルも気になって、つい購入してしまった方も多いと思います。
それはそのネット書店が膨大な購買データの蓄積とそのレコメンデーションエンジンの精度によって的確な提案が可能だからです。
そういう意味では、このカスタマイズされた接客を行う場合、データ量とレコメンデーションエンジンの精度が重要になります。
このようにネットショップは様々な施策やシステムの導入によって実店舗並みのカスタマイズされた接客を実現することができ、その結果、購入転換率(CVR)を実店舗に近づけることが可能となります。
商品の体感や試食、購買動機の細分化はページの改修やサービスのリリースによって実現可能ですが、レコメンデーション機能はシステムによって精度や速度に大きな差が出てきます。慎重に選定して採用することが重要となります。
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