ECの効果的なパーソナライズとは?購買行動のUXに与える影響を考察
ユーザーごとに最適化したコンテンツを届ける「パーソナライズ」は、ECサイトのユーザー体験(UX)を向上させる上で非常に重要な施策です。近年はUXのさらなる向上を目的として、サイト内検索の検索結果をパーソナライズするECサイトも目立ち始めました。
消費者にとって心地よい買い物体験を実現するパーソナライズとは、どのようなものでしょうか。1000人以上の消費者を対象に行なった意識調査の結果も踏まえ、ECサイトのUX向上や売上拡大につながるパーソナライズのあり方を考察します。
なお本稿では、ECサイトにおける検索結果のパーソナライズを実現する方法も紹介しています。自社ECサイトにパーソナライズ機能を導入する際の参考にしてください。
目次
- ECサイトにおける「検索結果のパーソナライズ」とは?
- 消費者も「検索結果のパーソナライズ」を求めている
- 検索結果をパーソナライズする2つの方法
- パーソナライズにECサイトのログを活用
- ECのパーソナライズとDXの関係性
ECサイトにおける「検索結果のパーソナライズ」とは?
私たちが普段、インターネット経由で利用しているサービスには、さまざまなパーソナライズ機能が使われています。例えばYouTubeなどの動画視聴サービスは、閲覧履歴などユーザーの行動履歴にもとづいて、ユーザーの興味関心が高いと思われる動画や広告を表示します。このようにレコメンド内容をユーザーごとに変えることでクリックや継続利用を促進しています。ニュースアプリで配信されるニュースの種類がユーザーごとに最適化される機能や、ユーザーの属性や行動に合わせて配信される広告(パーソナライズド広告)にもパーソナライズが活用されています。
もちろんECサイトにも、さまざまな形でパーソナライズ機能は使われています。例えば「商品レコメンド」や「メルマガのセグメント配信」を取り入れているECサイトも多いのではないでしょうか。
そして近年、EC業界で広がり始めた新しいトレンドが「検索結果のパーソナライズ」です。
「検索結果のパーソナライズ」とは、ECサイトの検索窓にユーザーが入力したキーワード(クエリ)に対して、検索結果をユーザーごと(あるいはセグメントごと)に最適化する仕組みのことです。例えば、オンラインショップの検索窓に「靴」と入力した場合、ユーザーの年齢や性別、趣味・嗜好などに合わせて検索結果を変更します。具体的には、ユーザーの年齢や商品の閲覧履歴、購入履歴などのデータをもとに、そのユーザーが好みそうな(購入しそうな)商品を検索結果の上位に表示するといった仕組みです。ユーザーには自分好みの商品に出会いやすくなり、コンバージョン率の向上が期待できます。
購買意欲が高い瞬間だからこそ効果的
「検索結果のパーソナライズ」は、ユーザーが商品を探しているとき、つまり購買意欲が顕在化している瞬間に実行されるマーケティング施策です。
メルマガやマイページのレコメンド機能は、ユーザーが受動的に接触するコンテンツであり、それらのコンテンツに触れる瞬間は必ずしも買い物をしようと思っているわけではありません。
一方、ユーザーがECサイトのサイト内検索を使用しているときは、買い物の意欲が非常に高い状態です。だからこそ、検索結果の上位にユーザーが欲しい商品を表示することで、コンバージョン率の向上が期待できるのです。
自社ECサイトにおけるコンバージョン導線を分析しているマーケターの方であれば、「キーワード検索」を経由した売り上げが大きいことをご存知でしょう。キーワード検索を使うユーザーは、探している商品のブランド名やカテゴリ名などに加え、用途、色、価格帯などを具体的に入力することがよくあります。つまり、探している商品をある程度具体的にイメージできている場合が多いということです。そのため、カテゴリ検索や特集ページを経由して商品にたどり着いたユーザーよりも、キーワード検索を経由したユーザーはコンバージョン率が高くなる傾向にあります。実際、NTTレゾナントが実施した調査では、キーワード検索を経由して商品にたどり着いたユーザーの購買率は、他の経路と比べて約10 倍近いという結果も得られています。
なお、一般的に検索結果の上位に表示された商品ほど、閲覧率は顕著に高くなります。ユーザーの多くは検索結果の下位まで、すべての商品に目を通すわけではありません。SEOの重要性を理解している方は、同じことがECサイト内でも言えると考えるとイメージがしやすいのではないでしょうか。
ユーザーが必要としていた商品が検索結果の下位に埋もれてしまい、ユーザーに気づかれず機会損失となる可能性があることは否定できません。だからこそ、ユーザーと商品のマッチングの精度を高める「検索結果のパーソナライズ」が必要なのです。
消費者も「検索結果のパーソナライズ」を求めている
ECサイトにおける検索結果のパーソナライズは、今や消費者からも求められているマーケティング施策です。
NTTレゾナントはこのほど、EC業界でパーソナライズ機能への需要が高まっていることを受けて、ECサイトのパーソナライズに関する意識調査(n= 1037)を実施しました。
その調査では、全体の36.7%がECサイトでのパーソナライズを希望すると回答。特に若い世代ほどパーソナライズを肯定的に捉える傾向が強く、18〜19歳は74.4%、20歳代では48.7%、30歳代は47.2%がパーソナライズを希望すると答えています。
本稿で紹介しているデータは、独自調査レポート『ECの効果的なパーソナライズ』に掲載されています。以下からダウンロード可能です。
【goo Search Solution独自調査レポート ダウンロードはこちら】
パーソナライズして欲しいシーンの1位は「検索結果」
さらにこの意識調査で、ECサイトにおいてパーソナライズした商品を表示して欲しいシーンを聞いたところ、もっとも多いのは「検索結果」でした。
多くの消費者が検索結果のパーソナライズを求めている背景には、どのような理由があるのでしょうか。
1つの仮説として考えられるのは、検索結果に表示される商品が多すぎると、目当ての商品を探せないと感じる消費者が数多くいるのではないかということ。商品数が多いECサイトでは、1つのクエリの検索結果が数百件、ときに数千件にのぼることもあります。
そういったECサイトでは、自分の好みに合った商品を検索結果の上位に表示して欲しいというニーズが、マグマのように溜まっているのかもしれません。
精度が低いパーソナライズは嫌われる?
ここで少し視点を変えて、ECサイトのパーソナライズに否定的な人の心理も考察してみましょう。
先ほど紹介した意識調査において、ECサイトのパーソナライズに否定的な人の割合は28.7%でした。その理由についての定性情報(自由記述)を分析したところ、「目的以外の商品をおすすめされると、本当に欲しい商品を探すのに時間がかかる」「目的以外の商品の情報は余計な情報なので、無駄であり不快」といった意見が見られました。
こうした意見を読み解くと、パーソナライズそのものに否定的というよりも、目的以外の商品を出されること(=精度の低いパーソナライズ)に嫌悪感を抱いていることがうかがえます。つまり、買い物の目的に合致した商品が表示されるのであれば、決してパーソナライズそのものに否定的な感情を持つことはない、という仮説が立ちます。
こうした点を踏まえると、パーソナライズに肯定的な人であれ否定的な人であれ、「自分の欲しい商品にスムーズにたどり着きたい」という思いは共通していると言えるのではないでしょうか。
効果的なパーソナライズ施策とは?
ECサイトにおける効果的なパーソナライズ施策のヒントになる、興味深い調査結果もあります。ECサイトで「目的以外の商品」を買った経験の有無を聞いたところ、62.6%が「ある」と答えました。
購入した理由でもっとも多かったのは「送料無料ラインを超える金額にするため」というもの。送料無料は消費者にとって非常に魅力的であることから、送料無料ラインを下回っているユーザーに対して、ユーザーの興味・関心にもとづいてパーソナライズされた商品をレコメンドすれば、高い確率で単価アップにつながると考えられます。
本稿で紹介しているデータは、独自調査レポート『ECの効果的なパーソナライズ』に掲載されています。以下からダウンロード可能です。
【goo Search Solution独自調査レポート ダウンロードはこちら】
検索結果をパーソナライズする2つの方法
ここからは、ECサイトのサイト内検索における「検索結果のパーソナライズ」の具体的な手法を解説します。パーソナライズのロジックは検索エンジンベンダーによって異なるため、絶対的な1つの正解があるわけではありません。今回は、NTTレゾナントが提供しているサイト内検索エンジンgoo Search Solutionで実現できる2つの方法を紹介します。
個人パーソナライズ
ECサイトのユーザーごとに検索結果を出し分ける「個人パーソナライズ」は、会員の年齢や性別といった属性情報のほか、「商品ページの閲覧履歴」「商品の購入履歴」「マイページのお気に入り情報」「コンテンツの閲覧履歴」といった行動データから興味・関心を推測し、検索結果をユーザーごとに最適化します。
例えば、ファッションECサイトであれば、個人の趣味嗜好に合わせて特定のブランドに重み付けをし、そのブランドの商品を検索結果の上位に表示することも可能です。
属性パーソナライズ
会員の性別や年齢、居住地、法人/個人など、任意のセグメントごとに検索結果を最適化するのが「属性パーソナライズ」です。例えば靴のECサイトにおいて、20歳代と40歳代のユーザーで購入するブランドの傾向が異なるというデータが取れた場合、ユーザーの年齢層に合わせて、検索結果の上位に表示するブランドを変更します。
また、個人と法人の両方を対象としているECサイトでは、個人会員には小分けにした商品を検索結果の上位に表示し、法人会員には業務用製品を表示するといった出しわけも可能です。例えば「砂糖」で検索した際に、個人アカウントには「1kg」、法人アカウントには「10kg(業務用)」の商品を表示するといった方法です。
なお、セグメントごとの購買傾向がはっきりしている場合には「属性パーソナライズ」がより大きな効果を発揮します。「個人パーソナライズ」の方が精度が高いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「属性パーソナライズ」はセグメントごとの行動履歴に関するログの量が多いため、ユーザーの傾向によっては「属性パーソナライズ」の方が精度が上がりやすいこともあります。サイトの特性を見ながら、どのようなパーソナライズを行っていくかを検討することが重要です。
◆関連機能
goo Search Solution「パーソナライズ検索」(https://searchsolution.goo.ne.jp/personalize/)
パーソナライズにECサイトのログを活用
goo Search Solutionのパーソナライズ検索は、ECサイトに蓄積されたログを活用しています。ECサイトのユーザーがアクセスした商品ページ、購入した商品、お気に入りに登録した商品、閲覧した特集記事など、さまざまな行動データからユーザーの興味・関心や趣味・嗜好を予測し、検索結果をパーソナライズします。
なお、goo Search Solutionはレコメンド機能も提供しており、ユーザー個人の購買傾向や趣味嗜好などのデータに合わせて商品やコンテンツのレコメンドをすることも可能です。
◆関連機能
goo Search Solution「パーソナライズドレコメンド」(https://searchsolution.goo.ne.jp/recommend/#recommend13)
また、すべてのパーソナライズ機能はA Iが自動的に最適化して実行するため、運用に人手はかかりません。担当者の業務負担が軽くなるのはもちろんのこと、俗人的な運用からの脱却も可能です。
ECのパーソナライズとDXの関係性
最後に、ECサイトにおける「検索結果のパーソナライズ」とデジタルトランスフォーメーション(DX)の関わりについて考察したいと思います。本稿で解説したECサイトにおける検索結果のパーソナライズは、小売企業のDXにおいて、どのような意味を持つのでしょうか。
昨今、社会のデジタル化や流通構造の変化を受け、小売業界にもDX化の波が押し寄せています。DXという言葉は一般的に、「データとデジタル技術を活用して企業のあり方やビジネスモデルを変革し、市場における競争優位を確立すること」だと考えられています。企業が取り組む項目は多岐にわたり、また、企業の業種や担当部署によってもDXの捉え方は異なりますから、本稿ではDXの全体像を論じることはしません。あくまでEC事業者やD2Cを行なっているメーカーが目指すべきゴールとは何かを考えます。
DXのゴールは、心地よい買い物体験を実現して売り上げを伸ばすこと
EC事業を行なっている小売企業や、D2Cに取り組んでいるメーカーがDXを推進する場合、そのゴールの1つは「オンラインショッピングでも実店舗と変わらない心地よい買い物体験を実現して売り上げを伸ばすこと」だと私たちは考えています。
小売企業が取り組むDXは、大きな方向性としては「業務の生産性を上げること」と「売上高を伸ばすこと」に集約されると思います。特にECは「商品を売って稼ぐこと」が本業である以上、売り上げを伸ばすことが重要であり、そのために新しい顧客を獲得することがDX化の着地点の1つになるでしょう。
ECの売り上げを伸ばす方法を突き詰めていくと、「心地よい買い物体験を提供すること」に行きつきます。そして、心地よい買い物体験を提供するための具体的な方法の1つが、精度の高い「検索結果のパーソナライズ」です。
UX向上はデータ活用が鍵になる
精度の高い「検索結果のパーソナライズ」を実現するには、ECサイトに蓄積したデータを活用することが鍵になります。ECサイトのログ(=ユーザーの行動データ)をもとに、ユーザーが探している商品や欲しい商品を予測し、検索結果の上位に表示する。これを実現することで、オンラインショッピングがより快適なものとなり、心地よい買い物体験を提供することにつながります。
ECサイトのログには、ユーザーの興味・関心や趣味・嗜好などに関する本音が如実に表れます。ログを分析することは、ユーザーに対して「好きなブランドはなんですか?」「欲しい商品はなんですか?」とカウンセリングを行い、ユーザーの好みの商品を探し出すことと同義と言えます。ECサイトのログを活用し、AIが実行するデータドリブンなパーソナライズを実現することが、心地よい買い物体験、オンライン接客を実現することにつながるでしょう。
本稿で紹介しているデータは、独自調査レポート『ECの効果的なパーソナライズ』に掲載されています。以下からダウンロード可能です。
【goo Search Solution独自調査レポート ダウンロードはこちら】
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